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『空き家』を売却する方法の基本を解説

相続で実家の空き家を取得したものの、特に使用する予定がなくそのままの状態で放置されている方も多いのではないでしょうか。しかし、使い道がないからといって空き家を放置したままでいると大きなリスクを抱えることになります。

この記事では、空き家の売却にかかる費用やその活用術について解説します。

売却を検討している方は、ぜひ参考にしてください。

1.空き家を売却する理由とは?

空き家問題の現状

日本の空き家問題は深刻化しています。総務省の2023年10月時点の調査によると、国内の住宅総数に占める空き家の割合は過去最高の13.8%で、空き家の数も5年間で50万戸増の899万戸と過去最多になりました。

とくに問題となっているのが「放置空き家」で、これは長期にわたって不在で使用目的がない空き家を指します。管理がされていない空き家の劣化は進行しやすく、景観の悪化や悪臭・害虫の発生、倒壊の危険といったあらゆる問題につながります。

放置空き家がもたらす問題は所有者が損害賠償を負う可能性があります。そのため、空き家を放置していることで周囲にどのような影響があるかを知る必要があるでしょう。


空き家を放置するリスク

放置空き家がもたらす問題は下記の通りです。

1.災害リスク
 空き家の老朽化が進行すると、倒壊や破損などのリスクが出てきます。なかでも火災には注意が必要です。
 火災による実害は自らの資産が消失するだけでなく、周囲への賠償責任に発展する可能性もあります。

2.防犯リスク
 空き家では不法投棄や不法占拠などの犯罪の温床になるリスクを抱えます。
 管理されていない空き家は、犯罪に巻き込まれていることにも気づかず被害が拡大する危険性を帯びます。

3.景観や環境への問題
 空き家やその周辺は管理が行き届かない為、ごみの散乱、害虫の発生など衛生的な問題を引き起こします。
 また、建物の老朽化や草木の繁茂により景観を損ね、地域のイメージを悪化させます。

4.資産価値の低下
 放置された空き家が増えると、その地域の資産価値が下落する傾向にあります。
 地域のイメージ悪化によって住宅街としての魅力が低下することは資産価値の毀損に繋がります。

5.近隣コミュニティとの関係悪化
 これまでのマイナスの影響によって近隣からの不信感や嫌悪感が増幅し、関係が悪化する懸念があります。
 近隣との関係が絶たれたままではつぎの買主にとっても大きなハードルになる可能性があります。

このように放置された空き家はあらゆる問題を引き起こすリスクが潜んでいるため
自分の資産を守るためにも放置することだけは避けましょう。


2.空き家売却の準備

必要な書類と手続き

売却に必要な書類を早めに揃えておきましょう。主な書類は以下の通りです。

• 登記簿謄本
• 固定資産税納税通知書
• 建物図面や測量図

次に主な手続きを見ておきましょう。

<空き家の名義変更>
空き家の売却では、名義を現所有者に変更しておかなくてはなりません。

不動産の売却では原則登記簿に記載されている名義人が売買契約を締結する必要があります。
そのため、空き家の名義が元の所有者のままになっている場合は、不動産の引渡し前までに名義を変更することが必要なので、売却前にあらかじめ名義を変更しておきましょう。



空き家の状態確認とリフォーム検討

先述の必要書類と合わせて家の状態も忘れずに確認しおきましょう。

居住者の使い方が良ければ建物の劣化は少なく状態が良好な空き家もあります。築年数が経っていても状態の良い空き家は、簡易リフォームを施して売却もしくは賃貸として保有し続けることもできます。とくに自身が住んでいた実家となれば、たくさんの思い出が残る建物を解体せずに済むことは本望ではないでしょうか。

そのため、空き家の劣化状態などを正しく把握して、リフォームによって再生する余地があるかを必ず確認しておきましょう。大規模な改修が避けられることは所有者の負担軽減にもなるはずです。

ちなみに、賃貸運用によって保有する場合は、空き家を貸したい人と借りたい人をマッチングする空き家バンクの登録がおすすめです。
空き家バンクに登録することで、空き家の有効活用が促進され空き家問題の解決に繋がります。


売却方法の検討と査定依頼

空き家の売却には、主に4つの方法があります。

1.現状のまま売却

空き家を解体せずそのまま売却するのが最も一般的な方法です。
リフォーム費用や解体費用などの余計なコストを削減できるため、最も負担の少ない売却方法と言えます。
但し、建物の老朽化が進行している場合はリフォームもしくは解体したほうが不動産の魅力が引き出せることもありますので、最適な売却方法は専門家に相談しましょう。

2.リフォームしてから売却

建物の劣化も限定的で最低限の改修もすれば利活用ができる状態であれば、リフォームしてから売却することも選択肢の一つです。
空き家の活用を促進する目的から、リフォーム費用の補助金制度が各自治体で用意されておりますので、本制度を利用して賢くリフォームが出来れば最低限の出費で空き家を売却することが出来ます。

3.解体してから売却

建物の劣化が激しく簡易なリフォームでは建物を再生できない状態であれば、建物を解体して更地にする必要があります。
あえて更地にするのであれば建物を残したまま土地として売却すればいいのでは?と疑問を持つ方も多いことでしょう。しかし、建物の老朽化が明白であれば、先述のとおりその地域の印象が悪くなりかねません。不動産は第一印象が肝心です。商品として世に出しても恥ずかしくないレベルにあるかを厳しい目で見極めてください。

4.不動産会社に買取依頼

これまでの1~3は不動産仲介会社に販売を依頼することが一般的ですが、不動産会社による買取も選択肢のひとつです。
買取とは、不動産会社が買主となり売主から『直接買い取る』ことです。

仲介と異なり早く売れるため、1ヶ月程度で現金化することも可能です。また直接の契約であり仲介手数料がかかりません。さらに、買主が不動産会社のため本来売主が負うべき建物の不具合による責任を免責にできます。残置物撤去までまとめてやってくれることが多く、手間がかからないのも大きなメリットです。

ただし、買取はあくまでも事業であり、不動産会社として利益を出さなければならないため、仲介を通じて売却するよりも安くなります。一般的には仲介による売却金額の7割程度になると考えておきましょう。

買取は売主の負担が少ない売却方法です。遠方に住んでいて手間をかけられない場合や、なるべく早く売却したい場合におすすめです。

尚、仲介会社に売却を依頼する前には、必ず『3社以上』から売却査定を依頼しましょう。
不動産の専門家とはいえ、依頼先の会社が得意とするエリアや種別によって査定価格が大きく異なることもありますので、出来るだけ地場の不動産会社で3社以上から査定依頼を打診しましょう。



3.売却方法の選択肢

空き家を売却する方法はいくつかあります。それぞれの特徴を理解して選択しましょう。


不動産仲介

不動産会社に依頼して、買主を探してもらう方法です。市場価格に近い値段で売却できる可能性が高いですが、売却完了までに時間がかかる場合があります。


買取業者への売却

買取業者に直接売却する方法です。即金で売却できるメリットがありますが、先述のとおり仲介に比べて価格が低くなる傾向があります。


オークションやネット販売

近年、オンラインで空き家を販売する手段も増えています。広い層にアプローチできる一方で、不動産会社が介入しないことで契約手続きやトラブル防止策が必要です。


4.売却時に知っておきたいポイント

空き家を売却する際にかかる費用

空き家を売却する際にかかる費用として、以下のような費用が挙げられます。

・仲介手数料
・印紙代
・抵当権抹消登記費用
・解体、リフォーム費用
・譲渡所得税

■仲介手数料は不動産会社に仲介を依頼する際に支払う費用です。売却価格が400万円を超える場合は「物件価格×3%+6万円+消費税」の速算式で算出できます。

■印紙は売買契約書を作成する際に課される税金です。売買契約書に記載された契約金額により税額は異なりますが、1~3万円程度が目安となります。

■抵当権抹消登記費用は、空き家に設定されている抵当権を抹消するために必要な費用です。抵当権がない場合は不要です。また、抵当権抹消登記の手続きを依頼する司法書士にも別途報酬が必要ですが、15万円~20万円が目安となります。

■解体・リフォーム費用は、建物の状態や周囲に与える印象によって販売に支障が出る場合には、検討するべき項目です。解体費用は木造であると坪6万円~7万円、RCは坪10万円~15万円程度が目安となります。

■譲渡所得税は空き家の売却によって利益が生じた場合に発生する税金です。
 売却した年の1月1日時点の所有期間によって税率が異なります。

 ▶短期譲渡所得(所有期間5年以内):39.63%
 ▶長期譲渡所得(所有期間5年超):20.315%

 譲渡所得税ついては、別のブログ記事で詳しく解説していますので気になる方は、ぜひ参考にしてください。

空き家の売却で活用できる特例制度

空き家の売却では、譲渡所得税を控除できる以下の特例制度があります。

・取得費加算の特例
・居住用財産の3,000万円特別控除
・空家に係る譲渡所得の特別控除
・軽減税率の特例

公的制度には細かい要件が設定されているため、適用されるかをしっかりと確認する必要があります。要件を満たすように売却を進めることで、空き家の売却で課される税金を節税でき、利益が減るのを防げます。詳しくは「知らないと大損!?相続した不動産を売却するときに活用できる特例完全ガイド」をチェックして下さい。

5.空き家売却の成功例と失敗例

成功するための秘訣

① 適切な価格設定を行う
不動産売却における適正な価格設定は、物件を迅速かつ効果的に売却するための重要な要素です。価格が適切であれば、売却までの時間が短くなるだけでなく、価格交渉される可能性も少なくなります。適正価格を設定する際に考慮すべき主なポイントを以下に挙げます。


 《市場調査》
 不動産の価格は、市場の動向に大きく左右されます。

 ・近隣物件の成約事例
 ・競合物件の価格
 ・市場ニーズの把握

 《物件の特性》
 物件の具体的な特徴も価格設定に影響を与えます。

 ・立地条件
 ・建物の状態
 ・土地の形状
 ・希少性

 《売却の目的と期限》
 売却の目的や期限によって取るべき戦略が異なってきます。


②売却前に清掃やクリーニングを実施する
物件の良し悪しの判断は第一印象で決まると言われます。清掃が行き届いていなかったことにより魅力が半減している物件をたくさん見てきました。目に留まる範囲は好印象を与えられるように常にきれいな状態を維持しておきましょう。


③信頼できる不動産会社を選ぶ
信頼できる不動産会社を選ぶには、実績と専門性を見極めるといいでしょう。
 ・取引実績:過去に扱った取引の件数や内容を尋ねると、その会社の得意分野がわかります。
 ・専門性 :売却には戦略がつきものです。どのような戦略が考えられるかを聞いてみると相手の専門性が透けて見えてくるはずです。



失敗を防ぐための注意点

《市場相場を無視した高額設定をしない》

「高い金額で売却したい」という心理は誰もが抱くことでしょう。とくに上昇相場のうちは「あわよくば」を期待して相場よりも高い金額で売却をスタートすることも珍しくありません。

しかし、ネットで気軽に査定依頼ができる「一括査定」は、複数の不動産会社が査定価格を競い合って高値をつけますが、実際にその金額で売れるかどうかは別問題です。一番高い査定金額を提示した不動産会社に依頼する売主さんも少なくありませんが、高すぎる金額で情報公開してしまったがために、いつまで経っても売れないで悩んでいる売主さんはたくさんいます。

一度でも売れ残りのレッテルが張られてしまうと相場の価格に戻しても売却することは困難になりますので、高い金額なりにも売れる根拠をもった価格を設定してください。


《手続きや税金に関する知識不足に注意》

先述のとおり、不動産の売却には税金が控除できる特例がいくつかあります。不動産が高額になればなるほど控除の効果は高まりますので、売却にかかる税金の種類や適用できる特例などについて専門家に相談してください。また、売却した翌年には確定申告が必要です。申告漏れによって延滞税や無申告加算税が課されることのないよう注意しましょう。




まとめ

近年の高齢化社会や人口減少の問題、固定資産税の節税(家屋が残ったままのほうが税金が安い)など、空き家を放置する背景にはさまざまな要因があります。

空き家の使い道がなく、手間のかかる管理を敬遠して野放しにしてしまう方も多いですが、本記事をご覧のとおり、空き家の置かれている環境や状態に応じて適切に対処すれば、資産として必ず活用できます。売却に伴う税額控除の特例も空き家活用の大きな助けとなることでしょう。

『空き家をどのように活用すればいいのか』『実際の資産価値がどのくらいあるのか』など、
空き家活用で分からないことやお困り事がありましたら、お気軽に当社までご相談ください。

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