アパート経営は、不動産投資の一形態で、遊休地にアパートを建築・所有して、入居者から賃料収益を得るビジネスです。
そして、アパート経営は相続税の節税対策としても有効な為、地主さんや資産家の方に広く活用されてきました。
しかし、都内のアパート経営の大半が節税以上に損している実態が内在し、家族のために守ってきたはずの資産がいつのまにか目減りしてしまっているという方が散見されます。
そこで、今回は「なぜアパート経営が失敗するのか?」その構造を分解して解説いたします。
1.はじめに
アパート経営とは
アパート経営をされる方には、様々は背景や目的があります。
土地をいくつも持っている地主さんは、相続税の節税対策を目的に余った土地にアパートを建てるケースが多く、昨今の投資ブームによってサラリーマン投資家が土地を購入してそこにアパートを建てる事例も増えてきました。
ちなみに、本ブログにおけるアパート経営の定義は、こうした新築アパートを土地から建築して始めるケースに限定して、既存の中古アパートを購入して経営するケースは対象としていません。
土地をいくつも持っている地主さんは、相続税の節税対策を目的に余った土地にアパートを建てるケースが多く、昨今の投資ブームによってサラリーマン投資家が土地を購入してそこにアパートを建てる事例も増えてきました。
ちなみに、本ブログにおけるアパート経営の定義は、こうした新築アパートを土地から建築して始めるケースに限定して、既存の中古アパートを購入して経営するケースは対象としていません。
アパート経営のメリット
アパート経営のメリットは、大きく分けて2つあります。
1つは、老後資金の備えや生活費の補填のために、本業の給与収入とは別の収入源を確保できる点です。
また物価上昇時には賃料の上昇や貨幣価値の影響を免れるといったインフレに強い特性も持っています。
そして、アパート経営は相続税の節税対策にもとても有効です。
節税対策になるその仕組みは、前回ブログ「不動産が相続対策になるその理由とは?」で解説していますので、気になる方は合わせてチェックしてください。
「蓄えているお金を投資商品の購入に回す」といった時代の流れとともに、アパート経営などの不動産投資のハードルは下がり、ますます土地を活用するその手段にアパートを経営を選択する方が増えてきました。
1つは、老後資金の備えや生活費の補填のために、本業の給与収入とは別の収入源を確保できる点です。
また物価上昇時には賃料の上昇や貨幣価値の影響を免れるといったインフレに強い特性も持っています。
そして、アパート経営は相続税の節税対策にもとても有効です。
節税対策になるその仕組みは、前回ブログ「不動産が相続対策になるその理由とは?」で解説していますので、気になる方は合わせてチェックしてください。
「蓄えているお金を投資商品の購入に回す」といった時代の流れとともに、アパート経営などの不動産投資のハードルは下がり、ますます土地を活用するその手段にアパートを経営を選択する方が増えてきました。
2.アパート経営の実例
地主Aさんのケース
私が過去にコンサルティングさせて頂いた地主Aさんのケースをご紹介します。
■地主Aさんが所有する不動産
地 域 :東京都世田谷区
現 況 :月極駐車場
市場価格:14,000万円相当
地主Aさんは、相続税対策として駐車場を潰してアパートを建築することを検討しておりました。
知り合いの建築会社に相談したところ、以下のシミュレーションを提案されました。
《建築会社から提案された内容》
▶アパート建築費:10,000万円
▶利回り:7%
▶家賃収入:700万円
建築会社の説明は、年間700万円の家賃収入を得ながら相続税対策にもなるというものでした。
本当に相続材対策になるのか、次に計算してみます。
■地主Aさんが所有する不動産
地 域 :東京都世田谷区
現 況 :月極駐車場
市場価格:14,000万円相当
地主Aさんは、相続税対策として駐車場を潰してアパートを建築することを検討しておりました。
知り合いの建築会社に相談したところ、以下のシミュレーションを提案されました。
《建築会社から提案された内容》
▶アパート建築費:10,000万円
▶利回り:7%
▶家賃収入:700万円
建築会社の説明は、年間700万円の家賃収入を得ながら相続税対策にもなるというものでした。
本当に相続材対策になるのか、次に計算してみます。
相続税評価額の算出
相続税の基準になる価額は“時価”ではなく“相続税評価額”です。
建物の相続税評価額は建物総事業費の40%~60%が目安となるため、今回は間をとって建物総事業費の50%を相続税評価額とします。
▶建物の相続税評価額・・・・10,000万円×50%=5,000万円
前回ブログでも記述しましたが、不動産投資を運用している建物は税法上「貸家」として評価額を引き直しますので、相続税評価額は3,500万円まで減額されます。
次に、土地の相続税評価額を計算してみます。
建物同様にアパートが立っている土地も「貸家建付け地」として相続税評価額が減額されます。
地主Aさんが所有している土地の市場価格は14,000万円でしたが、相続税評価額は11,060万円まで引き下がります。 ※簡便的に計算するために、ここでは自用地価額=時価としています。
建物の相続税評価額は建物総事業費の40%~60%が目安となるため、今回は間をとって建物総事業費の50%を相続税評価額とします。
▶建物の相続税評価額・・・・10,000万円×50%=5,000万円
前回ブログでも記述しましたが、不動産投資を運用している建物は税法上「貸家」として評価額を引き直しますので、相続税評価額は3,500万円まで減額されます。
次に、土地の相続税評価額を計算してみます。
建物同様にアパートが立っている土地も「貸家建付け地」として相続税評価額が減額されます。
地主Aさんが所有している土地の市場価格は14,000万円でしたが、相続税評価額は11,060万円まで引き下がります。 ※簡便的に計算するために、ここでは自用地価額=時価としています。
時価と相続税評価額の乖離
節税効果を計算すると、上記の通りとなりました。
時価と相続税評価額の差9,440万円の乖離が節税になるという説明の根拠です。
時価と相続税評価額の差9,440万円の乖離が節税になるという説明の根拠です。
節税効果
時価と相続税評価額の差9,440万円×相続税の税率が相続税の節税になります。
仮に、税率30%であると、9,440万円×30%=2,832万円も節税が出来ます。
確かに、家賃収入700万円を得ながら大幅な節税効果も狙えるとなると、建築会社からの提案も鵜呑みにしたくなる気持ちも分かりますが・・・・
ここには大きな誤解があります。
仮に、税率30%であると、9,440万円×30%=2,832万円も節税が出来ます。
確かに、家賃収入700万円を得ながら大幅な節税効果も狙えるとなると、建築会社からの提案も鵜呑みにしたくなる気持ちも分かりますが・・・・
ここには大きな誤解があります。
3.前提条件
総潜在収入と営業純利益
これまで見てきた家賃収入は、今回のアパートがマックスで稼ぎ出せる数字です。
これを「総潜在収入」といいますが、実際は空室期間の損失や運営に係る経費を考慮しなければなりません。
それらを加味した家賃収入(営業純利益)に正して、収益性を確認してみます。
●総潜在収入: 700万円
●空室損失 : ▲35万円
●運営費 :▲105万円
《営業純利益》 560万円
※都内新築の空室損失の目安は総潜在収入の5%
※木造の運営費(固定資産税・火災保険・修繕費等)の目安は15%~17%
これを「総潜在収入」といいますが、実際は空室期間の損失や運営に係る経費を考慮しなければなりません。
それらを加味した家賃収入(営業純利益)に正して、収益性を確認してみます。
●総潜在収入: 700万円
●空室損失 : ▲35万円
●運営費 :▲105万円
《営業純利益》 560万円
※都内新築の空室損失の目安は総潜在収入の5%
※木造の運営費(固定資産税・火災保険・修繕費等)の目安は15%~17%
アパートの本当の価値
アパートなどの収益不動産の価値は、不動産から将来的に生み出される収益を現在の価値に割り引いて計算する収益還元法を用いて査定いたします。
▶収益不動産の価値=1年間の営業純利益÷還元利回り
今回のアパートを建築した地域の利回りは5%程度でしたので、アパートの価値は以下のとおりです。
《アパートの価値》560万円÷5%=11,200万円
市場価値が24,000万円にあったはずの不動産がアパートを建築したことで11,200万円に目減りしてしまいました。つまり、12,800万円もの含み損を抱えることになります。
▶収益不動産の価値=1年間の営業純利益÷還元利回り
今回のアパートを建築した地域の利回りは5%程度でしたので、アパートの価値は以下のとおりです。
《アパートの価値》560万円÷5%=11,200万円
市場価値が24,000万円にあったはずの不動産がアパートを建築したことで11,200万円に目減りしてしまいました。つまり、12,800万円もの含み損を抱えることになります。
4.結論
節税額<含み損
アパートを建築した瞬間に12,800万円の含み損がでてしまいました。
たしかに、相続税は2,832万円の節税に成功しましたが、それ以上に不動産の価値が下がってしまい、
節税効果を台無しにしてしまうほどの大きな損失を招きました。
相続税評価額は下がるけど、不動産の価値も下がる・・・・
ここに、アパート経営の落とし穴があります。
たしかに、相続税は2,832万円の節税に成功しましたが、それ以上に不動産の価値が下がってしまい、
節税効果を台無しにしてしまうほどの大きな損失を招きました。
相続税評価額は下がるけど、不動産の価値も下がる・・・・
ここに、アパート経営の落とし穴があります。
アパート経営が成功する条件
今回は実際にあった相談事例から節税以上に価値を下げてしまう結果となりましたが、アパート経営が成功する以下のような条件や特徴があります。
■不動産の市場価格が低い郊外エリア
■先代から継いできた処分できない遊休地
■稼働率の悪い駐車場
■旗竿地(路地状敷地)
これらの特徴や条件にある土地を持った方はアパート経営が成功する可能性もあります。
評価や周辺利回りなどによっては、アパートを建築するほうが資産形成に有用なケースもありますので、
周辺の不動産市況や現状の収益性を分析することがとても大切です。
■不動産の市場価格が低い郊外エリア
■先代から継いできた処分できない遊休地
■稼働率の悪い駐車場
■旗竿地(路地状敷地)
これらの特徴や条件にある土地を持った方はアパート経営が成功する可能性もあります。
評価や周辺利回りなどによっては、アパートを建築するほうが資産形成に有用なケースもありますので、
周辺の不動産市況や現状の収益性を分析することがとても大切です。
5.まとめ
本記事ではアパート経営の本質を紐解いてその実態を解説させて頂きました。
「家賃収入」や「節税」といった魔法の言葉に踊らされてアパート経営の本質を見失ってしまう方が
非常に多くいます。
安易にアパート経営に手を出した結果、取返しのつかない状況まで追い込まれてしまうこともあるでしょう。
アパート経営を検討されている方は、アパートを建築する前にまずは市場価格と収益価格をそれぞれ査定してご自身が持っている不動産の価値を正しく理解することからはじめてください。
それこそが、アパート経営を成功に導く鍵です。
「家賃収入」や「節税」といった魔法の言葉に踊らされてアパート経営の本質を見失ってしまう方が
非常に多くいます。
安易にアパート経営に手を出した結果、取返しのつかない状況まで追い込まれてしまうこともあるでしょう。
アパート経営を検討されている方は、アパートを建築する前にまずは市場価格と収益価格をそれぞれ査定してご自身が持っている不動産の価値を正しく理解することからはじめてください。
それこそが、アパート経営を成功に導く鍵です。