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不動産が相続対策になるその理由とは?

相続税は、遺族にとって大きな負担となることがあります。しかし、不動産を上手に活用することでその税負担を軽減することが可能です。

本ブログでは、「不動産がなぜ相続税対策に効果的なのか」その具体的な理由と方法を詳しく解説します。

不動産の特性や評価方法を理解することで、適切な相続計画を立てる手助けをします。

将来の相続に備えて、今からできる対策を学びましょう。

1.はじめに

相続税の基本知識

相続税は、亡くなった方(被相続人)の財産を相続する際に、相続人に課せられる税金です。

不動産を含むすべての相続財産の価値に基づいて計算されますが、相続税に用いられる相続財産の価値は
時価ではなく、「相続税評価額」です。

相続税評価額は相続税法に基づいて決まりますが、不動産の評価額は一般的に「路線価」が用いられ、
都内であれば実際の市場価値(時価)よりも低く評価されることが大半です。

このため、相続時に不動産をうまく活用することで、税負担を大きく軽減できる可能性があります。

時価と相続税評価額の関連性

財産と呼ばれるものには現金、不動産、有価証券、生命保険などさまざまものがありますが、
その評価方法は財産ごとに決められています。

その評価方法に従って計算した財産の価額を「相続税評価額」といいます。

■財産例

 <時価>        <相続税評価額>
現金3千万円   ▶▶▶▶▶▶ 3千万円
不動産1億円   ▶▶▶▶▶▶ 7千万円 
有価証券2千万円 ▶▶▶▶▶▶ 2千万円
生命保険1千万円 ▶▶▶▶▶▶  1千万円

この例をとって、時価と相続税評価額の関係を図解したものが上図です。
※株式は購入価格=相続税評価額ではありませんが、ここでは簡便的に同一金額とします。

現金や生命保険(死亡保険金)は受け取った額が相続税評価額になりますが、
不動産の評価額は路線価から算出されるため、実際の価値は1億円あるのに相続税法上の評価額は
7千万円となり、この評価の乖離が節税になるという仕組みです。

節税対策で現金を不動産に組み替えている方はこの“乖離”を狙っています。


2.不動産の評価と相続税

相続税評価額の決定要因

不動産における相続税評価額に影響を及ぼす要因は、何よりも立地です。
不動産の需要が活発で市場価値が安定している都市圏は路線価よりも時価のほうが高い傾向にあります。

一方、人口減少が進み需給バランスが崩れている地方では、むしろ市場価値よりも路線価のほうが高くなる
ことが多いです。

立地の他には不動産の種別(住居・商業等)や面積、使用状況(居住用・事業等)が相続税評価額の決定要因になりますので後述していきます。

不動産評価の具体例

では、実際に取引したことのある不動産を参考にして、相続税の節税効果を見ていきます。

《不動産の概要》
場 所 品川区某所
種 別 居住用
価 格 10,800万円
路線価 56万円/㎡
評価額 4,663万円

仮に先ほどの図解を用いて財産構成の不動産を今回の不動産に置き換えて相続税を計算します。

すると、相続税は約581万円となります。これに対して、不動産は購入せずに不動産価格と同額を現金として
相続した場合の相続税は、1,675万円です。

その差は1,094万円です。不動産の節税効果がいかに大きいことがお分かり頂けたかと思います。


3.不動産が相続税対策に有効な理由

小規模宅地等の特例

不動産の節税効果は、時価と評価額の乖離だけではなく、不動産に定める制度利用によっても大幅は税額軽減が図れます。代表的な小規模宅地等の特例は、居住用や事業用の土地について、一定の面積まで評価額を大幅に減額できる制度です。

たとえば、居住用の土地は最大330㎡まで、評価額が80%減額されることがあります。
但し、この制度を利用するためには様々な条件をクリアしなければなりません。

そのため、前もってこの制度を理解しておく必要がありますし、相続発生後にご売却を考えられている方は
この制度を知っている不動産会社にお願いするかどうかでその後の相続税が大きく異なることを念頭に入れ
て不動産会社選びをされることをおすすめします。

投資用不動産

これまで相続税の圧縮効果を居住用不動産で見てきましたが、投資用不動産においても時価と評価額の乖離によって相続税を抑えることが出来ます。

そして、投資用不動産は「貸家建付け地」という特例があり実需不動産よりも更に評価額を低減できます。

貸家とは、文字通り賃借人に貸している不動産を指しており、投資家が所有する投資用不動産はまさにこれに該当します。

低い利回りでも投資用不動産を購入されている富裕層の多くは、相続税対策を目的としていることでしょう。
詳しくは、次の章で説明致します。

農地の特例

農地には、相続税法に基づく評価減の特例があります。農地は一般的に宅地よりも活用範囲が限定されていて
汎用性が低いことから、農地は宅地の評価よりも低く相続税の負担が軽減されます。

土地の面積や利用状況によって異なりますが、例えば市街地周辺農地の価額は、
その農地が市街地農地(宅地転用に必要な造成費が差し引かれます)であるとした場合の価額の80%に相当する金額によって評価されます。

尚、相続税の軽減に加えて、農地は固定資産税の軽減も受けやすく、相続後の経済的な負担も減少します。


4.貸家建付け地の特例

貸家建付け地と居住用不動産との計算式の違い

貸家建付地の相続税評価額を計算する際の一般的な計算式について説明します。

貸家建付地の評価額は、借家権を考慮して評価されるため、通常の宅地の評価額よりも低くなります。

賃貸人と賃借人の間には借地借家法という賃借人を保護するための法律が存在しており、
賃貸人は一度土地や建物を貸したら自分で利用できるはずの土地(自用地)が実質的に支配できる
範囲も限定されることから、その分評価額を軽減してくれます。

貸家建付け地の特例

貸家建付け地の計算式は以下の通りです。

貸家建付け地の評価額=自用地の価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

■例)路線価50万円、土地面積100㎡、借地権割合が70%、賃貸割合100%の時の貸家建付け地の評価額

自用地の価額(50万円×100㎡)×(1-借地権割合70%×借家権割合30%×賃貸割合100%)=3,950万円

※自用地の価額=「路線価×土地の面積」
※借地権割合とは、土地の価値の何割までが借地権に相当するかという数値です。
 国税庁が各地域毎に割合を定めており、路線価図で確認することが出来ます。
※借家権割合とは、建物を賃借人が使う権利の割合を意味しており、全国一律で30%です。
※賃貸割合とは、貸し出せる専有部の合計面積のうち実際に貸し出されている専有部の割合のことです。

貸家の具体例

投資用不動産における土地の評価は貸家建付け地により算出しましたが、建物(貸家)は固定資産税評価額から借家権割合、賃貸割合を乗じた価額を控除することが出来ます。

■例)固定資産税評価額2,140万円×(1-30%×100%)=1,498万円

※固定資産税評価額は「法務局管内新築建物課税標準価格認定基準表」から算出できますが、
 建物総事業費の40%~60%が目安です。

投資用不動産の節税効果

本章では貸家建付け地と貸家の評価額を計算例を用いて確認してきました。

借地権割合や借家権割合によって、居住用不動産の評価額よりもさらに軽減されることが
お分かり頂けたかと思います。

釈迦に説法ですが、地価の高いエリアであればあるほど節税効果が大きくなるため、
都内の投資用不動産は相続税法が改悪されない限り一定の需要は見込めると考えています。

尚、余談ですが、貸家建付け地や貸家の計算式で出てきた賃貸割合は、その数値が低くなればなるほど控除の額は低くなりますので、相続前に満室稼働させていることがとても大切です。


5.注意点とリスク

最後に不動産相続にまつわる注意点とリスクをみておきましょう。

換価分割

相続発生後に不動産を売却して得られた売却金を相続人間で分配する換価分割では、
売却活動に必要な十分な期間が取れません。一般的に四十九日を迎えるまでは手続きを控えることが多く、
相続申告までの約8か月間で売却を完了させなれければなりません。

さらに、不動産の売却に必要な測量は約2か月前後かかる可能性があり、契約してから引渡しするまでは
約1か月半程度を要することを考えると売却活動に専念できる実際の期間は約4か月程しかありません。

そのため売却を想定されている方は、前もって計画的に進めておくのが望ましいでしょう。

流動性の低さ

先で述べたとおり、不動産は換金するまでに時間を要します。

それに加えて、遺産分割ではその流動性の低さからトラブルに発展することもしばしばあります。

例えば、相続財産が不動産しかないケースで子二人のうち長男にすべてを相続させるといった場合では、
次男から遺留分侵害額請求権(法定相続分の半分)を行使される可能性があります。

その際には自分の預貯金から支払わなければなりませんが、万一その預貯金だけでは支払えないと
なれば先代が継いできた大切な不動産を売却して換金する他ありません。

このように相続によってやむを得ず売却するといったケースは実際に数多くあり、私もそのようなお客様を
たくさん見てきました。

相続財産の中で不動産の割合が多いご家族は前もって遺産分割の方法を決めておくのが賢明です。

過度な節税は禁物

本ブログでは、節税の重要性とその手段について解説してきましたが、不動産を活用した過度な節税は
おすすめしません。

2022年4月に行き過ぎた節税に待ったをかけた国税局が勝訴した最高裁の判決が下され、
一部からは「不動産による節税の終焉」とも囁かれるようになりました。

敗訴となった相続人は現行に則り投資用不動産の購入により合法的に相続税を節税しましたが、
節税目的が明らかな不動産購入は租税負担の公平に欠けるという国税局の主張から
約3億円もの追徴課税がなされました。

最高裁で”不動産購入による露骨な節税は認められない”判例がでてしまった以上、
今後は相続税の節税に厳しい目が向けられることは間違いありません。

相続税の節税目的で不動産の購入を希望される方は、事前に税理士に相談されることをおすすめします。


6.まとめ

本記事では相続税の節税のロジックとその効果について解説させて頂きました。

前回ブログでも触れましたが、不動産と相続の関係は切っても切れません。
関係性が深いからこそ、対策なしに相続すると不動産を発端にトラブルに発展するリスクも付きまといます。

相続税の節税で得られる経済的効果や計画的に不動産を活用してこなかった先に待ち構える大きなリスクのどちらにおいても、「知らなかった」では済まされないほどの損失を被ることになるため、
各専門家と相談しながら不動産を上手に活用していきましょう。

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