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知らないと大損!?相続した不動産を売却するときに活用できる特例完全ガイド

不動産の売却にはさまざまな費用が必要となりますが、そのなかには税金も含まれます。

実際に課税される税金について把握しておかないと、想定外の出費に悩まされることになります。

そして、相続した不動産については、売却時にかかる税金(譲渡所得税)が控除できる特例もいくつか用意されていますので、特例を知らないまま損をしてしまうケースも少なくありません。

そこで今回は、相続した不動産を売却する前に必ず押さえておきたい特例を詳しく解説していきます。

1.はじめに

譲渡所得税とは

譲渡所得税とは、資産を売却(譲渡)した際に得られる利益(譲渡益)に対して課される税金のことです。

特に不動産や株式などの資産を売却した場合に関わる税金であり、売却価格からその資産を取得した際の費用(取得費)や売却にかかった費用(譲渡費用)を差し引いた残りの利益に課税されます。

では、実際の計算方法について確認していきます。

計算方法

譲渡所得税は以下の計算方法を用いて算出します。


 譲渡所得=売却金額ー(取得費+売却費用)

譲渡所得に対して、所得税と住民税が課されます。


そして、譲渡所得税の税率は、以下のとおり資産の所有期間(売却前の所有年数)によって異なります。


■長期譲渡所得(所有期間が5年以上の場合)

所得税:15.315%
住民税:5%
合計税率:20.315%

■短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合)

所得税:30.63%
住民税:9%
合計税率:39.63%

※「所有期間が5年以上」とは、売却した年の1月1日時点における所有期間が5年を超えているかどうかで判断します。
 

譲渡所得の特別控除とは

譲渡所得の特別控除とは、先述した計算方法よって算出された譲渡所得を一定額控除できる特例がいくつかあります。

この控除特例を利用することで、譲渡所得にかかる税金が減額され、譲渡益が大きいほどその節税効果は高まります。

そこで、いくつかある譲渡所得の特別控除の特例について、詳しく見ていきましょう。


2.相続税の取得費加算の特例

取得費加算の特例とは

相続税の取得費加算の特例とは、相続で取得した不動産を売却する際に支払った相続税の一部を取得費に加算することができる特例です。

 
 譲渡所得=売却金額ー(取得費+売却費用)

譲渡所得の計算式から分かるとおり、取得費が増えることで、譲渡所得(売却価格から取得費や譲渡費用を差し引いたもの)が減少し、結果として譲渡所得税の負担が軽減される仕組みです。

適用要件

この特例の適用要件は以下のとおりです。

1. 相続開始から3年10か月以内に売却すること

相続が開始された日から3年10か月以内に、その不動産を売却することが条件です。
期限を過ぎてしまうと特例が適用されなくなるため、計画的に売却を進める必要があります。

2. 相続によって相続税が発生していること

この特例は相続税の支払いがある場合に限り適用されます。
適用する不動産を取得した人に相続税が課税されてないと、この特例は利用できません。


では、実際の計算方法を具体例を用いて確認していきます。

具体例

<前提条件>

父が他界し、時価1億円の自宅と5,000万円の現金を子が相続。

課税価格は1億1,400万円、相続税として2,860万円を納付。その後に自宅を1億2,000万円で売却しました。


■相続税:2,860万円(取得費に加算できる金額は1,900万円)

(取得費加算できる金額について)
※対象者の相続税×(取得した不動産の価格÷対象者の相続税の課税価格)


■売却金額:1億2,000万円

(自宅の売却について)
※取得費は不明につき売却金額の5%で試算
※売却費用(仲介手数料や登録免許税等)は500万円で試算


上記の前提条件をもとに、譲渡所得税を計算してみます。

 ●譲渡所得=売却金額ー(取得費+売却費用)
  =1億2,000万円-(600万円+500万円+1,9000万円)
  =9,000万円

 ●譲渡所得税=譲渡所得×税率(20.315%)
  =9,000万円×20.315%=1,828万円


試算した結果、売却した際にかかる譲渡所得税は1,828万円となりました。

仮に、取得費加算の特例を利用しなかった場合は、譲渡所得税は2,214万円となります。


よって、取得費加算の特例を利用した場合の税負担は、386万円も軽減できます。

ちなみに今回の試算では、取得費を「売却金額の5%」と設定していますが、
売却不動産を購入した時の売買契約書が残されていれば、その契約書に記載の購入代金が取得費となるため、売買契約書が存在しているかどうかを予め確認しておくことも大切です。


3.居住用財産の3,000万円特別控除

3,000万円特別控除とは

居住用財産を売却したときは、所有期間の長短に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例です。

本特例も無条件で利用できるものではありませんので、適用要件を確認していきます。

適用要件

この特例を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

1.下記のいずれかを満たす居住用不動産であること
  ・現在居住中の自宅である
  ・転居済みの場合は転居後3年目の年末までの売却である
  ・家屋が解体されている場合は、売却契約締結までの間に土地を賃貸として使用していないこと
  ・単身赴任の場合、配偶者が住んでいる建物である

2.売却した年、その前年および前々年に、マイホームの買い換えや交換の特例を受けていないこと

3.親族など特定の関係者への譲渡ではないこと

4.売却した年、その前年および前々年に本特例またはマイホームの譲渡損失についての
  損益通算及び繰越控除の特例の適用を受けていないこと。


■相続した不動産にも適用可能です

相続した不動産に特例が適用されるには、相続人自らも居住していたことが前提条件となります。

例えば、生前に親と同居していなかった子が実家を相続した場合には、3,000万円の特別控除の特例は利用できません。但し、生前に別居していた相続人でも利用できる「空家に係る譲渡所得の特別控除」特例がありますので次章で解説します。

また、相続した不動産の売却であれば、亡くなった日から3年10か月以内に譲渡した場合は、
先述の取得費加算の特例も併用することができ、軽減効果がさらに高まります。

※注意点※
生前における同居期間については、特段の定めがありませんので、亡くなる数日前から同居を始めた場合も本特例を利用することができますが、この特例を利用することだけを目的として同居したと認められる場合には、特例対象となりませんのでご注意ください。

住宅ローン控除との併用不可

住宅ローン控除については、入居した年、その前年又は前々年に、この自宅を売却したときの特例の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。

また、入居した年の翌年以後3年以内の各年中に3000万円特別控除等の居住用財産に係る特例の適用を受けるときは、その年分以後の各年分について、住宅ローン控除を利用することができません。

どちらの控除が得するか

<3,000万円特別控除>

例えば、譲渡所得が3000万円で税率が20%だった場合、3000万円特別控除の適用による節税額は約600万円となります。

一方、譲渡所得が100万円しかない場合の節税額は約20万円程度です。


<住宅ローン控除>

住宅ローンで購入不動産を取得し、年末のローン残高が3000万円だった場合、初年度の節税額は21万円(3000万円×0.7%)となり、13年間で約273万円の節税になります。


3000万円特別控除と住宅ローン控徐どちらの制度を利用した方が有利になるのかは不動産会社に確認して見極める必要があります。


4.空き家に係る譲渡所得の特別控除

空き家に係る譲渡所得の特別控除とは

相続によって取得した空き家を売却した際に譲渡所得を最大3,000万円まで控除するという特例です。

控除内容は前章の「3,000万円の特別控除」と似ていますが、3,000万円の特別控除の適用者は相続した不動産に居住していたことが条件となる一方、空き家の特別控除は、一定の要件を満たせば適用者が居住している必要はありません。

では、空き家の特別控除の適用要件を確認していきます。


適用要件

この特例を利用するためには、以下の厳しい要件を満たす必要があります。

①家屋の要件

 ・昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること

 ・相続開始直前まで被相続人が1人で居住していた家屋であること(被相続人が老人ホームに入所していた場合も適用可)

 ・区分所有登記がされていない家屋であること(マンションは特例を利用することができません)

 ・相続した時から売却する時まで、事業、賃貸、居住として一切利用していないこと



②売却の要件

 ・売却代金が1億円以下であること

 ・耐震基準を満たしている家屋であること(満たしていない家屋は耐震リフォーム又は更地にしてから売却すれば適用可)

 ・相続発生から3年を経過する年の12月31日迄に売却すること(令和9年12月31日が期限)

※注意点※
・相続人が複数の場合は、各相続人が本特例を適用できますが、相続人が3人以上の場合は、
 各人の控除額は2,000万円です。
・本特例をする場合は、取得費加算の特例は利用できません。
・土地と家屋の両方を相続して一体で売却しないと本特例は適用できません。

計算例

取得費加算の特例の章で計算した事例を引用して見ていきます。

 ●譲渡所得=売却金額ー(取得費+売却費用)
  =1億2,000万円-(600万円+500万円+3,000万円)
  =7,900万円

 ●譲渡所得税=譲渡所得×税率(20.315%)
  =7,900万円×20.315%=1,605万円


試算した結果、売却した際にかかる譲渡所得税は1,605万円となりました。

仮に、空き家の特別控除が適用されなかった場合の譲渡所得税は2,214万円となります。


よって、空き家の特別控除の特例を利用した場合の税負担は、609万円も軽減できます。


5.軽減税率の特例

軽減税率の概要

軽減税率の特例とは、所有している不動産を売却する場合に、その不動産の【所有期間が10年超】であれば、長期譲渡所得の税額に軽減税率を適用できる特例のことです。

通常の長期譲渡所得では、所有期間5年超で税率が20.315%ですが、10年超所有軽減税率の特例を適用すると、譲渡所得が6,000万円以下の部分については、税率が14.21%まで軽減されます。
6,000万円超の部分については通常の20.315%が適用されますが、特例を適用すれば大幅に節税できます。

また、住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却することが条件となり、3,000万円の特別控除と併用することも可能です。

但し、空き家の特別控除の特例や住宅ローン控除との併用はできませんので、利用する際には事前に専門家に相談されることをおすすめします。

計算例

課税所得が1億円、所有期間が10年超の不動産を売却した場合の税額を確認していきます。

「10年超所有軽減率の特例」と「3,000万円特別控除」の両方が適用となります。

 譲渡所得=1億円-3,000万円=7,000万円


次に、譲渡所得税の税率は、「6,000万円まで」の部分と「6,000万円を超えた」部分でそれぞれで計算します。

●6,000万円までの部分の譲渡所得税=6,000万円×14.21%=852万円
●6,000万円超の部分の譲渡所得税=1,000万円×20.315%=203万円

 譲渡所得税合計=1,055万円


6.売却時期

相続発生前と発生後

自宅を売却する際の譲渡所得税の特例は、自宅がマンションか一戸建かによって異なります。

そして、一戸建は被相続人と同居していたか別居していかによっても利用できる特例が異なりますので、生前に売却した方がいいのか、それとも相続後に売却する方がいいのかは対象不動産の種類や対象者の状況によって判断が変わります。

また、不動産の売却は相続税にも影響を与えるため、相続税の各種特例の適用可否を考慮したうえで、売却時期を相続発生前と発生後のどちらがいいかを見極める必要があります。

売却時期についてお悩みの方は、不動産会社やその他専門家にご相談されることをおすすめします。


7.まとめ

本記事では、相続した不動産を売却した場合に活用できる譲渡所得の特例をご紹介しました。

特例による節税効果はとても大きいため、特例適用に則って不動産の売却時期や利用方法を選択することをおすすめします。

どの特例を利用するのが最も効果的であるか、まずは不動産の専門家に相談することからはじめてください。

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